
甘くないのに甘い「静甘」とは何か
日本茶を飲むようになってから、ずっと気になっていたことがあります。それは、煎茶の甘み。このお茶は甘い、と聞くたびに、昔の私は不思議に思っていました。決して甘くはないのに、どうして甘いと言うんだろう。
甘い。でも、甘い飲み物ではない
いろいろな煎茶を飲むようになって、私にも少しずつ、その甘さがわかるようになりました。でも、不思議...このお茶甘い、と思うのに、甘い飲み物かと聞かれたら、答えはNO。渋味も苦味もあるし、もちろん砂糖のような甘さでもありません。では、うま味なのかというと、それも違う。苦味や渋味のあるお茶の中に、確かに甘さを感じる。でも、甘味だけが独立しているわけではなく、味わい全体から受け取る印象。
野菜にも、似たような甘さがある
考えてみると、野菜にも似た感覚があります。大根や春菊など、辛味や苦味のある野菜にも、どこか甘いと感じる瞬間があります。もちろん、野菜には糖分による甘味もあります。でも、それだけでは表現しきれない、素材全体の味わいから感じる甘さ。こうした甘さを、自然な甘み、や、ほのかな甘み、などと表現してきました。でも、私が感じているのは、単に甘味が弱いということではないんです。
この味わいを「静甘」と名づけました
この感覚を表す言葉が欲しくて、考えてみました。そして生まれたのが、「静甘(せいかん)」です。
砂糖の甘さとは異なり、素材の味や香りが重なり合う中で感じられる、甘さに似た穏やかな印象。苦味や渋味、うま味などと共存し、食べ物や飲み物全体が甘く感じられるわけではない。甘味の強さではなく、味わいの質を表す言葉。
「静」という字を選んだのは、その甘さが強く主張してこないから。ほかの味わいの中に静かに存在していて、少し意識を向けると気づくことができる。そんなイメージです。もちろん、科学的に新しい味覚を発見したわけではありません。私が感じていた味わいに、自分なりの名前をつけてみたのです。
名前がつくと、味わい方が変わる
以前は、煎茶を飲んでも苦い、渋い、が先に来て、美味しさを見つけることができませんでした。今は、その中にある静甘を楽しめるようになりました。名前がなかった頃から、きっとそこにあった味わい。名前をつけたことで、少し見つけやすくなった気がします。これからはお茶だけでなく、いろいろな食べ物の中にも静甘を探してみたい。そんな新しい楽しみが、ひとつ増えました。